POPs農薬分析
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POPsとは
POPs(ポップスと読みます)は、Persistent Organic Pollutantsの頭文字を取ったもので、日本語では残留性有機汚染物質と訳します。通常、POPsという表現が一般的です。POPsとは、難分解性、高蓄積性、長距離移動性、有害性(人の健康・生態系)を持つ物質のことを指します。POPsによる地球規模の汚染が懸念され、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)が2004年5月に発効しています。続きを読む
当初、下の枠内の12物質がPOPsとして附属書(A~C)に掲載されていましたが、第4回締約国会議(2009年5月)で新たに9物質が追加されました。農薬、化学製品、副生成物の3つのカテゴリーに分類されています。POPs(一部重複する物質もある)のうち、附属書Aは製造・使用・輸出入を禁止する措置を取るべき物質(PCBをはじめとする17物質)、附属書Bは製造・使用を制限する措置を取るべき物質(DDTをはじめとする2物質)、附属書Cは可能な限り非意図的な放出を減らす措置を取るべき物質(ダイオキシンをはじめとする6物質)が掲載され(重複あり)、条約の締約国に必要な措置の実施を求めています。
POPs農薬とは
POPs農薬とは、POPs条約によって指定された化学物質※1のうち、意図的生成物(10物質)のなかで工業化学物質であるポリ塩化ビフェニル(PCB)を除く9物質(群)を指します。なお、HCBとPCBは非意図的に生成される場合もあります。
これらのうち、日本国内では、DDT、エンドリン、ディルドリン、アルドリン、クロルデン、ヘプタクロルの6種類が、農薬の有効成分として過去に使用されていました(表)。続きを見る
農薬 |
用途 |
農薬登録年 |
失効年 |
---|---|---|---|
DDT | 殺虫剤 | 1948年 | 1971年 |
エンドリン | 殺虫剤 | 1954年 | 1975年 |
ディルドリン | 殺虫剤 | 1954年 | 1975年 |
アルドリン | 殺虫剤 | 1954年 | 1975年 |
クロルデン | 殺虫剤 | 1950年 | 1968年 |
ヘプタクロル | 殺虫剤 | 1957年 | 1975年 |
さらに、この後、平成21年5月に開催されたCOP4において新たに9物質群※2の追加が決定されました。なお、農薬のエンドスルファンは平成22年秋現在、POPs候補化合物です。
①アルドリン、②ディルドリン、③エンドリン、④クロルデン、⑤ヘプタクロル、⑥トキサフェン、⑦マイレックス、⑧ヘキサクロロベンゼン、⑨PCB、⑩DDT、⑪PCDDs(ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン)、⑫PCDFs(ポリ塩化ジベンゾフラン)
※2 COP4 で追加が決定された物質:9物質
①クロルデコン、②テトラ・ペンタブロモジフェニルエーテル、③ヘキサ・へプタブロモジフェニルエーテル、④ヘキサブロモビフェニル、⑤リンデン、⑥α-ヘキサクロロシクロヘキサン(α-HCH)、⑦β-ヘキサクロロシクロヘキサン(β-HCH)、⑧ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩・ペルフルオロオクタンスルホン酸フルオリド(PFOSF)、⑨ペンタクロロベンゼン
注:緑字がPOPs農薬
POPs農薬の使用状況と分析方法
(1)POPs農薬は、既に国内法で使用が禁止されており、POPs条約発効に伴って、埋設農薬(かつて埋設された農薬)の取り扱いが課題となっております。国立環境研究所のホームページから以下引用します。
埋設農薬
POPs条約の採択を受けて、日本政府はPOPs農薬の在庫管理と廃棄物の適正処理を迫られました。農林水産省が2001年に公表した「埋設農薬の実態調査の結果について」によると、過去に埋設処理されたPOPs農薬等のうち、埋設場所が特定されたものは全国174カ所(総数量約3,680トン)でした。また、環境省が2001年に行った「農家段階でのPOPs農薬等の保管実態にかかるモデル調査」では、1~2%程度の農家がPOPs農薬を保管している可能性があると報告されました。
2001年当時は、POPs無害化処理技術が確立されていませんでした。このため、環境省が策定した「埋設農薬調査・掘削等暫定マニュアル」(以下「旧暫定マニュアル」)では、埋設農薬を掘削・回収し、数年間保管しても密閉性、堅牢性、耐腐食性などが維持できる定められた容器で保管することを求めています。
その後、1)無害化処理技術の進歩、2)POPs条約発効と国内実施計画の策定、3)農林水産省による「埋設農薬最終処理事業」の開始(2004年から)などの条件がそろったことで、埋設POPs農薬を適正に処理するための環境が整ってきました。また、旧暫定マニュアルは2005年3月に改訂されました。
(2)POPs農薬分析方法(「埋設農薬調査・掘削等マニュアル」より引用)
POPs等物質
(対象物質:DDT、BHC、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン、ヘプタクロル )
○ 大気試料の分析法
大気試料の分析は「平成13年度第2回内分泌攪乱化学物質検討会」資料6「平成12年度内分泌攪乱化学物質大気環境調査結果について」(環境省環境管理局大気環境課)に基づき実施。ただし、大気試料の捕集方法については「モニタリング調査マニュアル」(平成17年度(2005年度)版「化学物質と環境」資料編(平成18年3月環境省環境保健部環境安全課))を参照すること。
○ 水質試料の分析法
分析方法:「農薬等の環境残留実態調査分析法」のⅠ水質編 有機塩素系化合物分析法による。
【概要:試料からヘキサンで抽出後、フロリジルミニカラムで精製、GC/ECD(又はGC/MS)で測定する。】
○ 農薬、土壌等の溶出量分析法
検液作成:土壌の汚染に係わる環境基準について(平3環告46)付表に定められている方法による。
分析方法:「農薬等の環境残留実態調査分析法」のⅠ水質編 有機塩素系化合物分析法による。
【概要:試料からヘキサンで抽出後、フロリジルミニカラムで精製、GC/ECD(又はGC/MS)で測定する。】
○ 農薬、土壌等の含有量分析法
分析法 :「農薬等の環境残留実態調査分析法」のⅣ土壌編 有機塩素系化合物分析法による。
【概要:試料からアセトンで抽出後、ヘキサンに抽出、グラファイトカーボン+フロリジル+NH2連結ミニカラムで精製、GC/MS(SIM)で測定する。】
分析項目一覧
下記の媒体の実績があります。
● POPs農薬;水質、底質、大気、生物試料
関係法令
● ストックホルム条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約
● 「埋設農薬調査・掘削等マニュアル」平成20年1月17日(環境省 水・大気環境局 土壌環境課農薬環境管理室)
農薬等に関する環境管理指針値一覧