PFOS、PFOA (難分解性有機フッ素化合物界面活性剤)
■ PFOS、PFOAとは
PFOSとはペルフルオロオクタンスルホン酸の略称で、下図(右)の構造式を持つ有機フッ素化合物です。また、PFOAとはペルフルオロオクタン酸の略称で、下図(左)の構造式を持つ有機フッ素化合物です。いずれも構造式を見れば分かるようにフッ素(F)でコートされた構造を持ち、生分解をほとんど受けず環境中に長い間残存する難分解性有機フッ素化合物です。
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低濃度で優れた界面活性効果を示すことから広範囲に使用されてきました。 PFOAは,有機フッ素高分子(フルオロポリマー)であるポリテトラフルオロエチレン(商品名テフロン)製造時の乳化剤としても用いられています。テフロンは環境分析にあたり、容器などに化学的な安定性から広く使用されていますが、PFOA、PFOS分析の際は、コンタミ(汚染)の避ける意味で試料採取から分析の過程では、テフロン(製品)の使用は禁止です。
人を含む生物に対する毒性について、次に記述します。PFOAを取り扱う工場の労働者の血液中の濃度が一般人と比較して高濃度であったことが報告されています。なお、PFOAについては、急性毒性はあまり強くありません(LD50:500mg/kg程度)。
同様に、PFOSも過去の動物実験の結果からは比較的毒性の低い物質とされており、アメリカ合衆国の環境保護局(USRPA)の調査でも「PFOSの無毒性量(NOAEL)は0.1 mg/kg体重、最小毒性量(LOAEL)は0.4 mg/kg体重」とされてはいます。 ただし、最近「ペルオキシゾーム(全ての真核生物細胞に見られる、膜で囲まれた細胞内小器官で脂肪酸のβ酸化やリン脂質の生合成など多くの重要な働きをしている。)」の増殖作用が有り、これにより「活性酸素の生成、発ガン作用、コレステロール代謝の攪乱など」の影響が現れるとの報告が有ります。また、生体内で胆汁と誤認され、薬物の代謝などにみられる腸肝循環を起こしていると言われています。また、免疫毒性も報告されています。さらに、臍帯血中のPFOS・PFOA濃度と乳児の体重、頭周長との間に有意な負の相関があることが報告されるなど、知見が集積されつつあります。
なお、毒性に関してのPFOA、PFOSについての最終的な結論は、まだ確定していない段階です。
PFOS、PFOA の使用状況と分析方法
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)が米国で鳥類をはじめ多くの種類の野生生物に濃縮されていることが判明しています。また、人間(米国)の血液中にも低濃度ながら、広く残留していることが判明し、さらに、その製造工場のラインで働いていた労働者の血液中濃度(一例)は、一般人の平均値の1000倍近い値であることが報告されています。PFOS自体は有機合成の中間体であり、PFOSを経て様々なフッ素化合物が製造されていました。その有機フッ素化合物の用途としては、繊維用撥水剤、撥油剤、カーペット用防汚剤、界面活性剤などがありました。日本でも撥水剤、消火器、航空関係での用途が知られています。 同じようなフッ素化合物の中間体にPFOA(ペルフルオロオクタン酸)がありますが、それも検出されています。その他生物体内中で、PFOSA(ペルフルオロオクタニルスルホン酸アミド)、PFHS(ペルフルオロヘキシルスルホン酸塩)が検出されています。
わが国では、平成22年4月から化審法の第1種化学物質に指定され、購入、使用に制限されています。 分析方法としては、LC/MSまたはLC-MS/MSによる分析方法が一般的に用いられています。
分析項目一覧
下記の媒体の実績があります。
● PFOS、PFOA;下水放流水、下水流入水、汚泥
各種基準及び測定方法
基準は、平成22年秋現在、わが国においてはありません。
● PFOS、PFOA ; LC-MS/MSによる方法
関係法令
● 化審法に規定されている第一種特定化学物質として、ペルフルオロ(オクタン-1-スルホン酸)(別名PFOS。以下「PFOS」という。)又はその塩、ペルフルオロ(オクタン-1-スルホニル)=フルオリド(別名PFOSF)が該当している。
なお、ペルフルオロ(オクタン-1-酸)(別名PFOA)